干物ハニーと冷酷ダーリン
『…そうですか。あなたが、、、』
ガンを飛ばしまくってたあたしを他所に、相崎さんはじっと水城さんを凝視する。
『何か?』
『いえ、水城さんって編集長をなさってるんですよね?って事は、、、』
『36で10も年下のコイツと付き合ってて、おかしいって?』
含み笑いを浮かべる水城さんから視線を反らしたのは相崎さんの方だった。
『大人の余裕って感じですね、、、なら言わせてもらいます』
あたしそっちのけで繰り広げられてる会話に、傍観者気分で観戦していると相崎さんが真顔であたしに目を向ける。
なに?何なにナニ?
まさか、自惚れpart2じゃないけど、編集者目線で言うとこの流れは、宣戦布告よ?
少女漫画、王道ストーリー展開。
ライバル登場→ヒロイン告白される→ヒーロー余裕の笑みで決め台詞【奪えるもんならやってみろよ】的なフラグよ?
萌えキュン台詞を追加するなら【こいつが惚れてんのは俺だぜ?】だな。
多分、水城さんも頭の中ではストーリー展開が構成されているに違いない。
だって、綺麗なお顔がニヤついています。
それ、ちょっとは隠した方がいいですよ。
ついでに、肩も震えてます。そんなに可笑しいですか。
『川本さん、好きです。出会って間もないですが俺、川本さんに一目惚れしたんです』
真剣に思いを伝える相崎さん。
それを聞いて尚更、肩を震わせる水城さん。
そして、編集者として素直にストーリー展開を当てた事を喜べずにいるあたし。
あーもー。これだから、編集者って困る。
相手にしたら、真剣な告白も先に見透かされてしまうんだもん。
これも一種の職業病なのかもしれない。
これじゃあ、あの時のニノ前だなぁ。
だから、嫌だったのに。
あたしは、これで相手を傷つける事も知ってるんだ。