干物ハニーと冷酷ダーリン
「…あの、、、」
『止めとけ』
何か喋らないと。そう思った矢先またしても隣からの言葉で遮られた。
『はっ?』
『一目惚れだかなんだか知らねぇけど、そんな上っ面だけのコイツを見てよく好きだなんて言えたもんだな』
ひとしきり笑ってスッキリしたのか、シフトチェンジをなさった水城さんの表情はいつも通りのただのイケメンになっていた。
『人を好きになるのに、時間とか年月とか関係ないと思いますけど?それに、後々相手の事を知っていくって事もありだと思いますけど』
『まぁな。間違っちゃいねぇけど、、、アンタはコイツのどこに惚れて好きだなんて言ったんだろうなと思ってな』
『……それ、あなたに言う必要ありますか?』
『いや、ないね。ただ、一目惚れでノリと勢いで言える奴はそういねぇから聞いてみただけだ』
煙草をくわえて空気を吸い込み、盛大に煙をはきだす。
吸って吐いてを二回繰り返した所で、水城さんは止めの一発を繰り出した。
『コイツを扱えるのは俺だけだ。クソガキ』
これには、ビビった。
驚いたでもビックリしたでもなくビビった。
恐怖。ただただ恐怖。
あまりにも水城さんの口から出たトーンが低すぎた。
あの長谷川営業部長とやり合うくらい低い。
そして、ドスめいてた。
怖すぎる。ただの出版社の編集長、それも少女漫画の編集長が怖い。
これだったら、印刷所の責任者のオッサンもびびっちゃうよ。二つ返事で締め切り延ばしてくれそう。