干物ハニーと冷酷ダーリン


『お前、眠いんだろ。寝るなら寝室使え』


一段落した川本は、コーヒーを飲みながら舟をこいでいる。


「…えっ、あ、、、あたしここでもいいですよ?邪魔ならそこらへんの床でも」


『今更、変な気をつかうな。いいから行け』



小さく頷き、すみませんと呟きながら川本は寝室へと向かっていた。

その後ろ姿を確認し、寝室の扉が閉まると俺はまた盛大なため息をついた。




シャワー浴びてくるか。

飯は、起きたら川本も連れて食いに行こう。

水浸しの部屋も気になるし、何よりアイツ、、、原稿を部屋に置きっぱなしにはしてないだろうな。


寝る前に確認しておけばよかった。





カラカラと回る乾燥機を見て、やっぱりそんな気にはなれないとちっぽけな期待をシャワーで流した。



俺も年か、、、。盛りのついた猿時代は終わったとしても彼女が一つ屋根の下、それもベッドで寝てるってーのにな。


昔、担当していた年配の作家に"年をとると刺激より、安定を求めるようになる"と言っていた。


当時は、今一意味が分からなかったが今になってよく分かる。


トキメキとかドキドキなんかより、ただそこにいるだけでいい、傍にいるだけでそれでいい。



刺激と安定。多分、そういう事なんだろうと思う。


川本はどう思っているかは分からないが、俺はそんな恋人のあり方もいいと思っている。



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