干物ハニーと冷酷ダーリン
ただでさえ、ここから戻れたら全ての業務を投げ捨てて直帰してやろうと思ってたのに。
そんなメッセージを送ってる暇があるならアンタが行け。
気晴らしに怒られてこい。
すぐに行け、今すぐ行け。
『お待たせしました。、、、川本さん?』
想いの丈を綴り、紙飛行機マークに乗せて飛ばしたところで、渋めなおじさま目の前に現れた。
おそらく藤堂さん。
いや、間違いなく藤堂さん。
「、、、初めまして。ダンテ出版編集部、川本です。」
デスクの中に放置されて日の目を見ないであろうと思われていた名刺をさっと差し出す。
『これはご丁寧に、、、、藤堂です』
すっと出された藤堂さんの名刺に感服した。
なにこれ、オッシャレー!!
『今日は、水城くんではないのですね』
「申し訳ございません!!本来ならばご挨拶に伺わせて頂くはずでしたが水城は自宅療養中でして、若輩者ですが私がご挨拶に伺わせて頂きました」
そりゃそうだよ。
上の人間が、来ないのはおかしい。
おかしいけど、仕方なかったんです。
すみません。数時間前の出来事だったんです、我々が、知ったのが。
付け焼き刃で本当にすみません。
『水城くんは大丈夫なのかい?』
「はい、ただの風邪ですので、、、、』
すげぇ悪い事した。
めちゃくちゃ心配してる。
しかも自宅療養中なんて嘘だし、水城さんめちゃくちゃ元気だし、、、、
重ね重ねすみません。
嘘も方便なんです。