干物ハニーと冷酷ダーリン


インスタントのコーヒーだが、些か缶コーヒーよりも薫り高いそれを持って、どうなっているか分からない打ち合わせ室へ入ろうとした瞬間、打ち合わせ室とは反対の方向から誰かに呼ばれた気がした。






『あのー、川本さーん!』



気のせいかと思ってドアを少しだけあけ、足を踏み入れた時、確かに聞こえた。



「…?……富井くん?」



大きな段ボールを抱えて、こちらに向かってくる富井くん。




「どうかしたの?」


『あの、これ島田先生から川本さんにと預かりました』


「…え?島田先生、来てたの?」


『はい、打ち合わせにいらしてたみたいです』


「そーなんだ、何だろう、それ」


『なんか、川本さんが欲しいと言ってたものらしいですけど……食べ物みたいですよ』


「え、あっ!本当!?届いたの!ナイスタイミングだよ!それちょっとこっちこっち」



なんて、グッドタイミング。

あたしは、対して何も考えずに届けものを持った富井くんと打ち合わせ室に入る。





< 74 / 361 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop