干物ハニーと冷酷ダーリン
『おい、川本。悪いが編集部に戻って野田と印刷所に行ってくれ』
ニコチン摂取に行っていた水城さんが、戻ってくるなり別の仕事を押し付けてきなすった。
ニコチン摂取にしては戻るのが遅いと思ったら、どこでそんな仕事を抱え込んできたんですか?
「…印刷所ですか?増刷か何かですか?」
それなら、野田さんだけでいいはずなのに。
『いや。野田の入稿が間に合わなかった』
「……は?」
何だそれは。
野田さんは、新人ではないが入社3年目の編集者だ。
つまりあれですか?
水城さんは、あたしに一緒に説教を食らってこいと言いたいのですか?
言いたいのでしょうね。その顔は。
嫌だとはとてもじゃないけど言えない。
何も、そんなあからさまに、早く行けよと言いたげな顔をしなくても。
行きますよ。行けばいいんでしょ?行くしかないんですよね?