副社長は束縛ダーリン
「朱梨が頑張っていることは否定してないよ」
柔らかな笑顔でフォローの言葉をくれてから、彼は私から離れて調理台の方へと歩く。
私は自分の好みで割烹着を着ているけれど、他の二班のメンバーは皆、自前のエプロンを着用している。
悠馬さんはエプロン姿でコロッケを作っている男性たちに順に声をかけ、それからデスクでパソコン作業中の男性社員とも、ひと言ふた言会話して、開発室から出ていった。
頼りがいのありそうな、素敵なスーツの背中を見送って、閉められたドアにそのまま視線を止める私は、ポツリと呟く。
「悠馬さん、なにしに来たのかな……」
彼は時々こうして、ふらりと二班の開発室に現れる。
特に用事はなさそうなのに、ただ二班のメンバーに声をかけて出ていくのだ。
副社長という仕事は暇ではない。
日々の細々とした決裁を下すのは副社長の仕事で、社長が数年先を見据えた運営を考えることができるよう、重要かつ急ぎの取締役業務は、ほとんどすべて彼がこなしていると言っていた。