副社長は束縛ダーリン
視界の隅に、さっきの女性が立ち止まっている姿が映った。
視線を横に振ると、彼女はなぜか睨むように私を見ている。
ロッカールームって電話禁止だったろうかと焦りを顔に浮かべたら、「まさかね」と彼女はポツリと呟いて歩き出し、すぐにその姿は見えなくなった。
『朱梨、どうした?』
今度はスマホから聞こえる声に、私は慌てる。
「あ、なんでもないです。買い物して、家に着いたらメールしますね。あちこち見たいお店があるから、ちょっと遅くなるかもしれません」
『遅くなるの? 心配だな……。二十時過ぎるなら、迎えにーー』
「大丈夫です! 二十時までに帰るようにしますので」
『絶対だぞ』と念を押されて電話を切り、無人の通路側を見て首をかしげた。
あの人、私を見ながら『まさかね』と呟いていたよね。どういうこと?
睨まれたことも含めて、その意味を考えてみたけれど、さっぱり分からない。
それで考えることを諦めて、私は準備に戻るのだった。