副社長は束縛ダーリン

今日一日、引きずりそうなほどにへこんでいる私に対し、泉さんは少しも残念そうではなかった。

眼鏡の奥のクールな瞳を細め、口元に少しだけ笑みを浮かべて、彼女は私をたしなめる。


「人のレシピで落ち込む暇があるなら、自分のレシピを考えなさい。私たちは同じ班の仲間だけど、ライバルでもあるのよ」

「ライバル!?」

「なに驚いてるのよ。当たり前でしょ。
新商品として発売できるレシピ数は決まってるんだから、誰かのレシピが通れば、自分の商品化が先に延びる。人の失敗は自分のチャンスだと思わないと」


泉さんの言葉に、ショックを受ける私。

同じ班の仲間だから、仲よく協力して開発に取り組もうと思っていたのに、先輩たちはライバルなんだ……。

驚きを顔に浮かべて「知らなかった」と呟いたら、泉さんに丸めた資料で優しく頭を叩かれた。


「純粋で欲がないのは朱梨のいいところでもあるけど、開発者としてはどうだろうね。
先輩たちの開発に協力して、試作品を食べて、美味しいって喜んでるだけじゃ、いつまで経っても一人前になれない。来期、新人が入ってきたら、すぐに抜かされるよ」

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