副社長は束縛ダーリン
廊下の途中で立ち止まった私に、泉さんも足を止め、二歩分の距離を置いて振り向いた。
「どうしたの?」
「泉さん……ありがとうございます。お陰で目が覚めました。
私は食べます。食べることとダイエットを両立させて、全力でいい女を目指します!」
胸の奥で、フツフツと湧き上がる闘志。
今ならコロッケを、三十個は食べられそうな気がする。
泉さんは目を瞬かせ、「食べるだけじゃなくレシピに結びつけなさいね」と、もっともな注意を与えてから、姉のような眼差しを向けてきた。
「さっき朱梨のこと、純粋で欲がないと言ったけど、それに単純で猪突猛進も付け加えた方がいいわね。
朱梨を選んだ副社長の気持ちが分かる気がするわ。ついつい面倒見たくなっちゃうもの」
褒め言葉なのかは微妙だが、それに「ありがとうございます!」と元気な返事をして、心の中では長谷部くんのことを考えていた。
次の土曜、彼が他の予定を入れてしまう前に、連絡しないと。
今の私には、美味しい洋食屋のコロッケが必要なのだから。