副社長は束縛ダーリン
慌てるあまり、キュロットスカートのポケットに紙ナプキンを突っ込んで、私は椅子を鳴らして立ち上がる。
「ゆ、悠馬さん、こんにちは!」
「は?」と訝しげに私を見る彼に、しまったと、心の中で呟いた。
普通なら『そんなに待ってませんよ』とか『お疲れ様でした』と返すべきところを、おかしな返事をしてしまった。
なにを隠したのかと問われる予想に心臓を忙しくさせていたけれど、悠馬さんの視線がポケットに向くことはなく、「行こうか」と、私のバッグと会計伝票を手に歩き出した。
そのスーツの背中を追いながら、「自分で払います」と慌てて言う。
一緒に座っていたわけじゃないし、ひとり分のアイスティーくらい払わないと……。
しかし悠馬さんは私の方を見ずに言う。
「俺が払う。あいつに話もあるしね」
あいつって?と疑問に思う私の視線は、レジで止まる。
レジカウンターの内側に立っているのは、クッキーをご馳走してくれたカフェ店員で、『あいつ』とは、彼のことではないかと、嫌な予感に冷や汗が流れ落ちた。