副社長は束縛ダーリン
「悠馬さん、お願いですから、ああいうのはやめてください」
店の前で向かい合って立ち、ヒヤヒヤさせられたことへの文句を口にすると、腕組みをした彼に、ジロリと見下ろされる。
「俺が悪いの?」
そんなふうに聞かれると……「悪くないです」と言うしかない。
クッキーを断らずにもらったり、連絡先の書かれた紙ナプキンを隠したり、嫉妬させるようなことをした私の方が悪かったのかも。
ばつの悪い思いで肩をすくめ、「ごめんなさい」と謝る。
その上で「連絡する気はこれっぽっちもなかったんです」と、浮気心がないことだけは強調しておいた。
うつむき加減で、目線だけを上げて彼を見ると、形のよい唇からは小さな溜め息がこぼれ落ちている。
それから彼は距離を詰め、私の腰に腕を回すと、歩みを促した。
「分かってるよ。朱梨は真面目だし、二股かけられるような器用なタイプでもないってことは」
並んで歩きながら、悠馬さんはそう言った。
その声色からは、不機嫌さが消えているような気がして、私はホッと胸を撫で下ろした。