副社長は束縛ダーリン

今日もそこそこ暑いというのに、おじいさんは紺色の着物の上に羽織まで着込んでいた。

顔にはマスクをして、曇り空の下なのに、なぜか顔の半分が隠れそうなほどの大きなサングラスをかけている。

「すみませんねぇ」と、マスクの奥でくぐもった声で謝り、おじいさんは私たちの横にある花壇のレンガの囲いに、「どっこらせ」と腰かけていた。


ここは若者で賑わう街。

杖をついたお年寄りがいるのは珍しく、おじいさんは人目を引いている。

でも私は、それとは別の理由で、おじいさんをじっと見てしまった。

どこかで会ったことがあるような……。


できればマスクとサングラスを外して顔を見せてほしいところだけど、勘違いかもしれないし、初対面だとしたら、そんな失礼なお願いをすることはできない。

それで、知り合いかどうかを確かめるために「あの……」と声をかけようとしたが、長谷部くんが「行こうよ」と先立って歩き出したので、私はその場を離れるしかなかった。


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