副社長は束縛ダーリン
「あそこの店だよ。老舗って感じだろ?」
長谷部くんが連れてきてくれた店は、メインストリートから外れた裏通りの、マンションや住宅が建ち並ぶ中に、ひっそりと埋もれるようにあった。
緑色のビニールのひさしには、『キッチンぱぴぷぺぽ』と変わった店名が書かれていて、昭和の香りが漂う古めかしい外観をしていた。
ドアの横にはプラスチックケースに入れられた食品サンプルが展示され、スパゲティもオムライスも色褪せている。
決して美味しそうには見えない食品サンプルに、私はコクリと唾を飲み込んだ。
綺麗で小洒落た新しい店より、地元住民に昔から愛されているこういう店の方が、私の求めるヒントをくれそうな気がする。
コロッケは庶民のおかず。
私が作りたいコロッケは、美味しいだけじゃなく、食べてホッとするような、懐かしい気持ちにさせられるような……そんなコロッケなのだと、食べる前に気づかされた。
今の気づきを忘れないように、ショルダーバッグからノートとペンを取り出し、メモをする。
すると、長谷部くんに苦笑いされた。