副社長は束縛ダーリン
「完全に仕事モードだね……」
「うん」
なにを当たり前のことを言っているのかと、疑問に思いつつ、彼の開けてくれたドアから店内へと足を踏み入れた。
中は四人掛けのテーブルが四つと、ふたり掛けが三つあり、奥にはそれほど広くない厨房が見えている。
「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ〜」
白いコック服を着た中年男性と、緑色のエプロンを着た中年女性が厨房にいて、奥から声を張り上げたのは女性の方。
きっと夫婦ふたりで切り盛りしているのだろうと予想して、私たちは奥の壁際の、四人掛けのテーブル席に向かい合って座った。
十一時十分という昼食には少し早いこの時間、他の客はふた組だけ。
混んでくるのはきっとこれからだろう。
そう思っていたら……カランコロンとドアベルが鳴り、客がまたひとり入ってきたようだ。
何気なく振り向いて、目を瞬かせた。
入ってきたひとり客が、先ほど駅前の広場で会った、あのおじいさんだったから。