副社長は束縛ダーリン

なぜか歯切れの悪いしゃべり方で、ゴニョゴニョとよく分からないことを言う長谷部くん。

この食べ歩きでの私の目的を、前もって伝えてあるはずなのに、どうしたのだろう?

会話を弾ませながら、楽しく食べる方を優先させてと言いたいのかな?


私は一旦、ノートとペンを置き、再度彼に目的を説明する。


「長谷部くん、私は遊びに来たわけじゃなくて、新作レシピのヒントを探しにきてるんだよ。そう言っておいたよね?」


首をかしげて見つめると、彼はごまかすかのように笑顔を作り、スプーンにのせたビーフシチューの肉を私に向けた。


「仕事目的なのはもちろん分かってるって。
はい、俺のビーフシチューも食べる? これが冷凍コロッケにどう結びつくのか分かんないけど」


濃厚なデミグラスソースでよく煮込まれた牛肉は、歯が不要なほどに柔らかいのは見て分かる。

美味しそう……。

そう思うと、自然に口が開いていた。

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