副社長は束縛ダーリン
そこまで考えてハッとした。
このおじいさんは、芸能人なのかもしれない。
すぐに思い当たる人物はいないけれど、有名な映画やテレビドラマの出演俳優だったりして。
顔を隠しているような雰囲気に、そう結論を出した私は、有名人の休日を邪魔してはいけないと、気にするのをやめて意識を料理に戻した。
ハンバーグを食べてはペンを走らせ、オムライスを崩して中の具材を調べては、ノートに記す。
その間、長谷部くんは小さな溜め息を漏らすだけで、もう私に話しかけてこなかった。
さっき、私に『食べる?』と聞いて差し出されたスプーンも、今は彼の口に黙々と運ばれているだけだった。
洋食屋を出ようとしたのは、十二時半頃のこと。
店内は混んできて、席待ちの客も数組いた。
会計はそれぞれが注文した分を払うことにした。
長谷部くんが『奢ってあげる』と言ってくれたけど、そういうわけにいかない。
私は彼の後輩でもないし、ましてや恋人同士がデートしているわけではないのだから。