副社長は束縛ダーリン

店を出る際にチラリとおじいさんのテーブルを見たら、目が合ってしまった。

サングラスの奥の瞳は見えないけれど、パッと隠すように顔を逸らされたから、視線が合ったことは確かだと思う。


やっぱり、休日をお忍びで楽しんでいる俳優なんだ。

ジロジロと見ては悪いよね。

なるべく気にしないように……とはいっても、ここでお別れで、もう会うことはないと思うけれど。


涼しい店内から外へ出ると、外気がさらに蒸し暑く感じられる。

日陰を選んで駅の方へと歩きながら、隣の長谷部くんに問いかけた。


「次のお店は、どこにあるの?」


今日は夕方までかけて、三軒の洋食屋を回る予定でいる。

しかし長谷部くんは、「もう行くの? 食べ歩き以外のこともしようよ」と苦笑いしていた。

満腹で、すぐに二軒目は無理だと彼は言う。

そして、ショッピングやカラオケ、映画鑑賞を提案してきた。


確かに私も、お腹はいっぱいだけど……。

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