副社長は束縛ダーリン
適当な言い訳を見つけて、長谷部くんにお財布をしまわせていたら、急に後ろに男性の声がした。
「このミニブーケを、全部くれんかのう」
どことなく作り物のようなその声に、聞き覚えがある気がした。
長谷部くんが買うのをやめたミニブーケを、すべて買うと言ったことにも驚いて、後ろを振り向くと、またあのおじいさんがいた。
どうしてここにいるの!?
偶然? それとも、この辺に住んでいるの?
頭に疑問符が駆け巡る私の隣で、同じように目を見開いている長谷部くんだったが、私を背中に隠すように一歩前に出ると、「すみませんが」とおじいさんに話しかけた。
「俺たちの後をつけて来たんですよね?
一体、なにがしたいんですか?」
長谷部くんの言葉を聞いて、私の疑問も同じ結論にたどり着いた。
これは偶然ではない。
三度、同じ場所で顔を合わすなんて、ついて来たとしか思えない。
そうすると、洋食屋の側の路地に気配を感じたのも、気のせいではなく、確かに覗かれていたのだろう。