副社長は束縛ダーリン
ここまでの移動距離は二キロほどで、約三十分かかっている。
私たちに離されずに尾行してきたなんて……意外と足腰が丈夫なんだ!
感心している私に対し、長谷部くんは警戒心剥き出しで、おじいさんと対峙している。
しかし、おじいさんの方は長谷部くんの質問に答えず、顔も見ようとしない。
花屋の店員に代金を支払い、ビニール袋に入れられた十五束のミニブーケを、淡々と受け取っているだけだ。
「聞こえてますよね? 答えてください」と、長谷部くんがおじいさんとの距離を半歩詰めるから、私は慌てて彼の正面に回り込み、宥めようとした。
「お願い、お年寄りには厳しくしないで。
私は別に構わないから……」
芸能人のおじいさんが、なぜ私たちの後をつけるのか。
その理由はさっぱり分からないけれど、尾行されても問題はない。
悠馬さんに後をつけられているというのなら、ものすごく困るけれど。
長谷部くんの腕をさするようにして、その怒りを鎮めようとしていたら、突然おじいさんに手を引っ張られ、彼から離された。