副社長は束縛ダーリン
急に触られたことよりも、引き剥がされた後に、手に持たされた物に驚く。
おじいさんは、購入したばかりのたくさんのブーケの入ったビニール袋を私にくれたのだ。
「あ、あの……」
「わしからのプレゼントじゃ。花を萎れさせたくなければ、早く家に帰りなさい」
一方的にそれだけ言うと、おじいさんは踵を返す。
右手で杖をついて、左手を腰の後ろに添え、いかにもお年寄りといった歩き方で、商店街のアーケードを出ようとしていた。
その後ろ姿を黙って見送っていたら、隣に長谷部くんの舌打ちが聞こえた。
「変な人だな。今日のデートを邪魔されてる気分に……あ、ごめん。デートじゃなく、食べ歩きだよね!」
長谷部くんは自らの発言を慌てて訂正していたが、私はデートと言われたことよりも、まだあのおじいさんが気になって、背中を目で追っていた。
少しだけ手を握られたけれど、おじいさんの手はお年寄りらしくなかった。
肌質はスベスベとして、男らしい指は長くスラリとしていた。