副社長は束縛ダーリン

それに、おじいさんが踵を返した際に、フワリと香った甘い匂いは、どこかで嗅いだ覚えがある。

どこだったかな……。


おじいさんの姿は商店街から消えてしまったが、アーケードの出入口方向をじっと見つめて、私は記憶の中を探る。

しかし思い出す前に、長谷部くんに話しかけられて、思考は中断してしまった。


「朱梨ちゃん、あそこに総菜屋があるよ。コロッケもありそうだ。変な老人のことは忘れて楽しもう」

「う、うん……」


コロッケはもちろん食べるけど、おじいさんのことは忘れられそうにない。

さっきからドキドキと、鼓動が二割り増しで速度を上げていた。

これからも食べ歩くので、ブーケを渡されても困るはずなのに、私はどうして喜んでいるのだろう……。


その後は、総菜屋で三種類のコロッケと、蒸したてのシュウマイをひとパック購入し、さてどこで食べようか?と周囲を見回す。

すると、アーケードを抜けた先に、『鶴亀公園、五十メートル』と書かれた標識を見つけ、その公園まで移動しようという話になった。

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