副社長は束縛ダーリン
移動しながら、左右、後ろと、視線をあちこちに配ってしまうのは、おじいさんが尾行しているのではないかと気にしているせい。
でも今度は気配を感じない。
もうついて来ないのかな……。
それを残念に思う私は、一体どうしてしまったのだろう。
おじいさんの顔はサングラスとマスクで見えなかったけれど、さすがは芸能人と言うべき、イケメンオーラが感じられた。
声も手も若々しく長身で、若い頃も今も、きっと女性人気はすごいのではないかと想像させられる。
大人買いしたブーケを、サッとプレゼントしてくれるし、格好いい人だったよね。
名前と顔が知りたいな……。
そんなことを考えてしまい、ハッとして首を横に振った。
私には悠馬さんという最高の彼氏がいるのに、お年寄りとはいえ、他の男の人に頬を熱くするなんて……。
その浮わついた気持ちをごまかそうと、わざとはしゃいで、長谷部くんに話しかける。
「あそこのベンチまで競争しようよ。
よーい、ドン!」
「え、この歳でかけっこ!?」