副社長は束縛ダーリン
「帰りまで、黙ってようと思ったんだけど……無理なのは、もう分かったから、今言うよ。
本当は、ユッコに今日のこと……」
この食べ歩きに、最初からユッコを誘っていなかったと打ち明けられて、私は驚く。
急な結婚式云々の話も、嘘だったみたい。
私を騙した理由は、「朱梨ちゃんとふたりで遊びたかったから……」ということらしい。
まるで私を狙っていたかのような暴露話に、あからさまにうろたえる。
右手のペンは地面に滑り落ち、左手の食べかけのコロッケも落としそうになって「あっ」と声を上げたら……コロッケごと、左手を長谷部くんに握られた。
いつものただの同期ではない、男の顔をした彼が、私をじっと見つめてきて……。
「俺、実は入社時から朱梨ちゃんのこと、かわいいと思ってたんだ」
「え!? で、でも長谷部くん、社内の何人かと付き合ってたよね?」
「ふたりね。けど、ふたりとも美人なだけで、なにか違うと思ったから別れることになった。やっぱり朱梨ちゃんがいいなと、最近は特に思うようになってね」
同期での飲み会のとき、確か長谷部くんに“ちょうどいい女”だと評価された覚えがある。
あのときはショックを受けた私だったけど、もしかしてあの言葉は、彼流の褒め言葉だったの……?