副社長は束縛ダーリン
それとほぼ同時に「なにやってんだ!」と、遠くの方から大声がして、誰かがこっちに走ってくる姿が視界の端に映り込んだ。
声のした方に振り向き、私は目を見開く。
あのおじいさんが、五十メートルほど先の公園入口から、猛スピードで駆けてくるのだ。
杖は手にしていても、ついていない。
腰は伸びて、アスリートのように美しいフォームで走るおじいさんは、あっという間に私たちの前まで来て、力尽くで私を長谷部くんから引き剥がした。
私は今、ベンチから立ち上がらされて、おじいさんに正面から抱きしめられている。
驚いている理由は、突然ナイトのように助けてくれたからではなく、その正体に気づきかけているからだ。
着物越しでも分かる、この引きしまった体躯と、頼りがいのある力強い腕。
爽やかで少し甘い、香水の香り。
もしかして……。
「また、あんたかよ!」と、後ろに長谷部くんが立ち上がる気配がした。