副社長は束縛ダーリン

「なんなんだよ一体。俺の彼女を離せよ!」


サングラス越しでは、おじいさん……いや、彼の瞳は見えないけれど、ジロリと私に視線を落とし、睨まれたような気がした。

彼の腕の中で、私はブンブンと首を横に振り、『俺の彼女』と言った長谷部くんの言葉を否定する。

私はちゃんと断ったし、二股かけるようなことはしていないのに……。


『違うでしょ!』という思いで、首だけ捻って後ろを見ると、長谷部くんが私を取り戻そうと腕を伸ばしてきた。

その腕を払い落としたのは彼で、もう我慢ならないと言いたげに、声質を変えることなく話し始めた。


「誰がお前の彼女だって?
朱梨は俺の女だ。汚い手で朱梨に触るな」

「……は?」


彼の正体に私は先に気づくことができたけれど、長谷部くんは今やっと、“まさか”という思いの中にいるようだ。

彼は私から腕を離すと杖を落とし、白髪のウィッグとマスクを取り、最後にサングラスを外して地面に投げ置いた。

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