副社長は束縛ダーリン

実家は下町の商店街の靴屋で、高校を卒業するまでは店舗の二階の、六畳二間と四畳半に家族五人で住んでいた。

だから、こういう昭和の雰囲気漂う、狭い部屋は反って落ち着く。

会社から徒歩八分で、家賃四万八千円というのも魅力的な点だ。


体から雫を垂らして狭い浴室から出ると、壁掛け時計は二十時五十分を示していた。

脱衣所などない間取りなので、台所前の板間で体を拭いてパジャマに着替えをし、冷蔵庫横の姿見の前で髪を乾かす。

肩までの黒髪にドライヤーの温風をあてながら、そろそろ髪を切りにいこうかと考えていた。


悠馬さんは『伸ばせば?』と言っていたけど、私は縛らなくて済む程度の、この長さが好き。

髪を染めなくても、明るく軽やかで、快活なイメージの髪型だと思うから。

丸顔に百五十三センチの小柄な体型が相まって、幼い印象を持たれてしまうのは、少々気になるところでもあるけど……。


ドライヤーのスイッチを切ったところで、スマホの着信音に気づく。

台所前の板間から、二歩で畳の上に移動し、木目の丸いちゃぶ台風のローテーブルに駆け寄って、スマホを手に取った。

< 22 / 377 >

この作品をシェア

pagetop