副社長は束縛ダーリン
肩を大きく上下させて呼吸を乱し、どうやら会社から全力で走ってきた様子。
たくさんの文句を言いたげに眉間に皺を寄せる彼だけど、まだ息が苦しそうで、その代わりに私の手首を強く握ってきた。
「悠馬さん、ええと……色々とお疲れ様です」
取りあえずの労をねぎらってみた私。
『なに勘違いしてるんですか〜』と、笑って軽く流せない雰囲気で、すぐに誤解を解きたくても言葉に迷ってしまう。
「あの、中に入ってお茶でも飲みながら話を……」
引きつる笑顔でそう言って、足を一歩引いたら、握られている手首を引っ張られ、スーツの胸に飛び込むこととなる。
潰されそうな力で強く抱きしめられて、怒りに悲しみを混ぜたような、切実な声を耳元に聞いた。
「俺から離れるのは許さない。朱梨を愛しているんだ。絶対に別れないから」
思わず顔が耳まで熱くなり、私は胸を高鳴らせた。
これは……悪くないかも。
愛される喜びに、もう少し勘違いさせたままにしておこうかと邪な心が芽生えたが、彼の苦しげな吐息を頬に感じて、慌てて勘違いを訂正した。
「誤解です! 私だって別れるつもりはありません。悠馬さんのことは大好きですから」