副社長は束縛ダーリン
「冷凍コロッケはユキヒラ食品の独擅場じゃない。うちは今、三十種類ほどの冷凍食品を取り扱っているけど、コロッケはないのよ。
あなたに有利となる勝負にしてあげたのに、自信がないの?」
「そういう理由じゃないんです。恋人を賭けるのが嫌なんです。絶対にやりませんから」
キッパリと否定した私に、望月さんは迫力のある視線を向けてくる。
美人に凄まれると、気圧されそうになるけど……負けられない。
悠馬さんを取られまいとして、視線をそらさずに耐えていたら、彼女は急に笑みを取り戻し、フフッと声をあげて笑った。
「分かったわ。あなたとの直接勝負は諦める」
やけにすんなりと引き下がった彼女に一瞬、気を緩みかけた私だったが、すぐに引きしめ直すことになる。
「別の方法で悠馬を手に入れることにするわね」
「え……別の方法?」
聞き返しても、彼女からの答えはない。
グラスに半分ほど残っていたアイス珈琲をひと口飲んだ彼女は、ストローの先に赤い口紅を残して、会計伝票を手に席を立つ。