副社長は束縛ダーリン

その後は席に座り直し、彼女が書類ケースから真っさらなA4紙を取り出して、手書きで契約書を作り始めた。

先に聞かされたコロッケ勝負について記されて、勝った者が悠馬さんと交際するとも書き込まれている。

それを手早く二部作成した彼女は、まず自分で署名捺印し、その下に私にも同じようにするよう求めてきた。


「印鑑がないなら拇印でいいわよ。はい、朱肉」


名前を書こうとするペン先が震えている。

やらなければならないけれど、この勝負に私は勝てるのだろうか?

開発部員といえども、今まで自分のレシピを商品化させたことはないのに……。


そこまで考えて、問題があることに、はたと気づいた。

この契約書には九月から十一月の三ヶ月間で新作コロッケを開発し、十二月初旬に発売と記されているが、私には無理だと。


記名の途中でペンを止めた私に、彼女はいらついた声で「早くして」と催促する。


「あの……」

「なに? 応じないなら、ユキヒラ食品をーー」

「違うんです。やらないんじゃなくて、できそうにないんです。実は……」


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