副社長は束縛ダーリン
署名させられて、契約書を一部渡される。
「詳細が決まったら連絡するわ。今日はこれで失礼するけど、最後にひとつ気になっていたことを言ってもいいかしら?」
「はい?」
「いかにも安物に見える服はやめて。今はまだ、あなたが悠馬の恋人なんだから、彼の評価を下げないように気をつけて」
「はい……」
セール品の服に駄目出しをされてしまった。
ユッコと楽しく選んだ服なのに……でも彼女の注意も分かる気がして、反論の言葉は出てこない。
先に席を立った彼女は、歩く姿も美しく、会計を済ませると颯爽とレストランを出ていった。
周囲は三分の二ほどが空席で、店内音楽の歌詞が聞き取れるほどに静かだったが、女子高生風の四人組が来店し、隣のテーブルに着くと急に賑やかになる。
「やっぱ季節限定は見逃せないでしょ」
「しかも二十パーセントオフ、やったね!」
その会話は数十分前にユッコと私が交わしていたものと似ていて、フルーツパフェを楽しむことができる少女たちを羨ましく思っていた。
テーブル上の契約書を読み返して、深い溜め息をつく。
焦って契約しちゃったけど、今、冷静になって考えてみれば、彼女の術中にはまった気もしなくはない。
どうしよう。帰るのが怖い。
悠馬さんに、なんて説明したらいいのだろう……。