副社長は束縛ダーリン
ビニール手袋を外し、大きなシンクの中で洗い物。
ボウルやトレーは手早く洗い終えたが、フードプロセッサーの、刃のついた羽は洗い難い。
洗剤をつけたブラシで羽の隙間をこすっていると、「出来たよ」と、野田さんの嬉しそうな声がした。
油切りバットの網の上にのせられているのは、俵形のコロッケが八つ。
野田さんは、そのひとつを小皿にのせて、洗い物中の私のところへ持ってきてくれる。
ナイフでコロッケを半分に割って見せてくれると……。
断面からはチーズがトロリ、バジルソースといっしょに流れ出し、小皿の上には二色のソースが広がった。
ドライトマトの甘酸っぱい香りも、湯気とともに立ち上って、私の食欲を刺激する。
「わ、すっごく美味しそうです!」
大きな声で素直な感想を述べると、それぞれの作業に没頭していた他の班員たちも集まってきた。
「野田くんの新作か。色が綺麗だね」
「いい香りだな〜。イタリアの風景が目に浮かぶよ。行ったことはないけどね」
「味見させて?」