副社長は束縛ダーリン
泡だらけの手を割烹着で適当に拭ったら、野田さんを押し退けるようにして、油切りバットに手を伸ばし、まだ揚げ立てと言えるコロッケのひとつを手掴みした。
「あっちっち」と手の平で転がしながらフーフーと息を吹きかけて冷まし、にっこり笑ってそれを悠馬さんの口元に持っていく。
「野田さんのコロッケ、とっても美味しかったですよ。副社長もぜひ、味見してください」
悠馬さんの瞳からは、まだ怒りの色が消えていないけれど、「はい、アーンして」という糖度高めの言葉に誘われて、彼は口を開いた。
ひと口で食べるには少々大きいコロッケなので、三分の一ほどが、彼の口の外にはみ出している。
彼が噛み切った残りのコロッケは、私が自分の口の中へ。
垂れて指についたバジルソースをペロリと舐めてから、彼を見上げて微笑んだ。
「副社長、どうですか? 美味しいですよね?」
同じ食べさせるという行為でも、野田さんがやったことより、私が悠馬さんにした『アーン』の方が親密度が高いでしょう。