副社長は束縛ダーリン

泡だらけの手を割烹着で適当に拭ったら、野田さんを押し退けるようにして、油切りバットに手を伸ばし、まだ揚げ立てと言えるコロッケのひとつを手掴みした。

「あっちっち」と手の平で転がしながらフーフーと息を吹きかけて冷まし、にっこり笑ってそれを悠馬さんの口元に持っていく。


「野田さんのコロッケ、とっても美味しかったですよ。副社長もぜひ、味見してください」


悠馬さんの瞳からは、まだ怒りの色が消えていないけれど、「はい、アーンして」という糖度高めの言葉に誘われて、彼は口を開いた。

ひと口で食べるには少々大きいコロッケなので、三分の一ほどが、彼の口の外にはみ出している。


彼が噛み切った残りのコロッケは、私が自分の口の中へ。

垂れて指についたバジルソースをペロリと舐めてから、彼を見上げて微笑んだ。


「副社長、どうですか? 美味しいですよね?」


同じ食べさせるという行為でも、野田さんがやったことより、私が悠馬さんにした『アーン』の方が親密度が高いでしょう。

< 39 / 377 >

この作品をシェア

pagetop