副社長は束縛ダーリン
うちに入っても、金目の物なんかない。
五百円玉貯金箱に貯まっているのは、五千円にも満たない少額だし。
でも荒らされるのは困る。
大掃除をさせられるのは、年末だけにしてもらいたいから。
慌てて塗装の剥げた外階段を駆け上がり、二〇一号室のドアノブを掴む。
すると鍵はかけられていなくて、手の中でスムーズに回転する。
今朝は間違いなく戸締りして出かけた記憶があるので、やっぱり泥棒かと思って、勢いよくドアを開けたら……数歩分しかない廊下の先の畳に、あぐらをかいている若い男の後ろ姿を目撃した。
手の中のスマホをいじっているような様子の男は、私に気づいて肩越しに振り向いて……。
「姉ちゃん、お帰り」
私とよく似た丸顔で、愛嬌のある丸い目が、こっちを見ていた。
私はポカンとした後に脱力して、買い物袋を玄関のコンクリートの上にドサリと落とす。
それからおかしさが込み上げて、プッと吹き出して笑ってしまった。