副社長は束縛ダーリン
「なんだよ、俺、どっか変?」
ツンツンに立たせた短い黒髪を気にしながら、玄関先まで出てきたのは弟で、名前は草太(そうた)。
十九歳の大学生で、千葉にある実家暮らしをしている。
なにかあったときのためにと、この部屋の合鍵をひとつ実家に預けてあるから、草太はそれを使って上り込んだのだろう。
その目的はきっと、弟がハマっている、『ベニエ・ド・ポム・ド・テール』というロックバンドのライブ。
その推測通り草太は、「明日、ライブがあるから泊めて。服も買いに行きたいし」と言って、私が落とした買い物袋を持ち上げた。
靴を脱いで部屋に上がりながら、私は焦らされた文句を言う。
「いいけど、メールくらい入れてからおいでよ。泥棒かと思ったじゃない」
「泥棒はこんなボロアパートを選ばない。
いかにも金がなさそうじゃん」
「そうだけど、下着泥棒とかだってーー」
「もっとない。朱梨のパンツ盗んでなにが楽しいんだよ。雑巾にもしたくないから」
優しいお姉様が、快く泊めてあげようとしているのに、この愚弟は……。