副社長は束縛ダーリン

「なんだよ、俺、どっか変?」


ツンツンに立たせた短い黒髪を気にしながら、玄関先まで出てきたのは弟で、名前は草太(そうた)。

十九歳の大学生で、千葉にある実家暮らしをしている。

なにかあったときのためにと、この部屋の合鍵をひとつ実家に預けてあるから、草太はそれを使って上り込んだのだろう。


その目的はきっと、弟がハマっている、『ベニエ・ド・ポム・ド・テール』というロックバンドのライブ。

その推測通り草太は、「明日、ライブがあるから泊めて。服も買いに行きたいし」と言って、私が落とした買い物袋を持ち上げた。


靴を脱いで部屋に上がりながら、私は焦らされた文句を言う。


「いいけど、メールくらい入れてからおいでよ。泥棒かと思ったじゃない」

「泥棒はこんなボロアパートを選ばない。
いかにも金がなさそうじゃん」

「そうだけど、下着泥棒とかだってーー」

「もっとない。朱梨のパンツ盗んでなにが楽しいんだよ。雑巾にもしたくないから」


優しいお姉様が、快く泊めてあげようとしているのに、この愚弟は……。


< 51 / 377 >

この作品をシェア

pagetop