副社長は束縛ダーリン

店の二階が住居となっていて、母が上がってくる夜まで、育ち盛りの姉弟の胃袋は待っていられない。

それで夕食の支度は、一緒に暮らしていた祖母がしてくれていたけれど、子供向きの料理が作れず……。


『美味しいよ』と言いながらも、煮魚をつついて物足りない顔をしてしまう、子供の頃の私たち。

それに気づくと祖母は、五百円玉を一枚くれて言うのだ。


『肉の松屋で、コロッケを買っておいで』


肉の松屋は隣の商店で、いつでも揚げたての惣菜を売っていた。

ハムカツやメンチカツ、唐揚げも美味しいけれど、我が家で買うのはコロッケと決まっている。

一個八十円で、五百円あれば六個も買える。

祖母は油物はいらないと言うから、両親がひとつずつで、私と弟は二個ずつ食べられるのだ。


そんな肉の松屋も、私が高校生になる頃に、後継者がいなくて閉店してしまった。

いつでもすぐにコロッケを食べられる環境を失った私たち姉弟は、どんなに落ち込んだことか……。


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