副社長は束縛ダーリン

「家に着いてます。すみません、メールするのを忘れてました。ちょっとバタバタしちゃって」

『バタバタ? なにかあったのか?』

「いえ、大したことじゃないんです。心配しないで下さい。悠馬さんは、まだお仕事中ですか?」

『今から退社するところだ。これから荷物を取りに帰って、羽田に……』


一番下っ端の開発部員の私は、出張経験がない。

開発部にいる限り、これから先もきっと、出張するような仕事は与えられないだろうと思う。

コロッケの開発は天職だと思っていても、出張という言葉は魅力的に響いて、憧れる。


会社の経費であちこち出かけて、色んな人との出会いや、珍しい物を目にしたり、ご当地名物を口にしたりと、楽しそう。

あくまでも仕事で出掛ける悠馬さんの苦労も知らずに、そんな感想を抱いて、彼の退社後のスケジュールを聞いていた。


二十時半の飛行機で、新千歳空港か……。

出張先は北海道の札幌市みたい。

いいなぁ、札幌。

海産物の宝庫だし、ジャガイモだって名産だ。

北海道産のキタアカリを蒸して、バターをつけて食べたいな……。

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