副社長は束縛ダーリン

そのとき、浴室の中折れドアがガチャリと開いて、全裸の草太が廊下に出てきた。

意外と筋肉のある、細身の体を隠しもせずに、草太は私の方に向いて言う。


「朱梨、バスタオルちょうだい」

「え、出してないの? さっき、タンスの中から自分で出してねって言ったじゃない」

「そうだっけ?」


私の話を右から左に聞き流していたね?

この弟は、まったくもう。

しかも、こうやって『朱梨』と呼び捨てにされるとカチンとくる。

高校生になったくらいから、すっかり生意気になっちゃって。まだ成人前の子供のくせに。


スマホを耳に当てたまま、「手を焼かさないでよ」と文句を言えば、草太はビショビショの体でバスマットから一歩、踏み出した。


「分かったよ。じゃあ、自分でーー」

「草太、待って! 畳に雫が垂れるから、そこを動かないで。バスタオルは私が取ってあげる。
大体あんたね、股間ぐらい隠しなよ。恥ずかしく……」


そこまで会話をしてから、耳に当てているスマホが、やけに静かなことに気づいた。


「悠馬さん、すみません、ちょっと弟が。
かけ直しても……あれ? もしもーし?」


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