副社長は束縛ダーリン
会社からここまでは、私の足で歩いて七分ほどで、足の長い悠馬さんが走れば、三分ほどで着くと思う。
マズイ、急がなければ!
「早く、コロッケ」と、着替えを終えて髪を拭いている草太に駆け寄り、そのTシャツの胸元を掴んで引っ張った。
「おわっ、姉ちゃん、なんだよ?」
「今はコロッケ揚げてる場合じゃないの。
あんた、免許取ったって言ってたよね? 免許証出して。すぐに身分証明しないと、面倒くさいことになるから」
「……は?」
それから二分ほどして、うちの玄関チャイムが連打された。
戸惑う草太を後ろに立たせ、私は緊張しながら鍵を開ける。
カチャリと解錠の音がするや否や、勢いよくドアが開けられて、悠馬さんは飛び込んできた。
ネイビースーツを社内一格好よく着こなす彼は、この前と同じように険しい顔をして、明らかに焦っている様子。
その迫力に押されて、草太が足を一歩、後ろに引いたような気配を背中に感じていた。
私の両肩を力強く掴む大きな手の平。
「朱梨、これは一体どういうーー」と詰問し始めた悠馬さんの言葉を遮り、私は彼の顔の前に、印籠のように草太の免許証を突きつける。