副社長は束縛ダーリン
「草太は弟です。浮気ではありません。
明日、弟の好きなバンドのライブがあるそうで、今晩ここに泊めることになりました」
悠馬さんは肩で息をしながら、近すぎて見えない免許証を手に取る。
その写真と私の後ろにいる草太を見比べて、「なんだ、弟か」と、ホッとしたように呟いた。
免許証は効果てきめん。
言葉で説明するよりも、すぐに納得してくれて、ややこしい事態にならずに済んだことに、私もホッと息を吐き出す。
お互いに安堵した後は、彼は私にもたれかかるように腕を回して抱きしめた。
「他の男に取られるかと思って、焦った」
「もう。私が浮気するはずないじゃないですか。こんなに悠馬さんが好きなのに」
熱い息が首筋にかかる。
これから出張だという忙しいときでも、こんなふうに駆けつけるなんて、私のことを大切に思ってくれる証拠だ。
私って、相当に愛されてるね……と、幸せ気分でスーツの背に腕を回したら、後ろに戸惑っているような草太の声が聞こえた。
「あのさ、姉ちゃんに彼氏ができてよかったと思うけど、いちゃつかれると弟としては困るというか、見たくないんだけど……」