副社長は束縛ダーリン

モグモグと口を動かしながら、頬張りすぎて聞き取れない声で「生意気ばっかり言うからよ」と笑ってやったら、すぐにやり返される。

私の皿には手付かずのコロッケがひとつ残っていて、それを手掴みで盗まれたのだ。


私が食べたのは、半分ほどの食べかけだったのに、草太は丸々ひとつなんてズルイ。

そんなの、私が損して終わるじゃない。


「返してよ!」

「ヤダね。ノロマな朱梨。取れるもんなら取り返してみな」


盗まれたコロッケに向けて手を伸ばすが、草太にサッとかわされる。

立ち上がって奪い返そうとしても、草太も立ち上がり、頭上にコロッケを掲げて、勝ち誇った笑みを浮かべている。


草太の身長は百七十五センチくらいだろうか?

私より二十センチほども高いので、背伸びしても届かなくて、コロッケに向けてピョンピョン飛び跳ねていた。

そんな私たち姉弟を見ている悠馬さんが、吹き出して笑い始める。


「コロッケを奪い合う姉弟か。仲がいいんだね。微笑ましい」

「微笑ましくも、仲よくもないですよ!
喧嘩してるんですから!」

「朱梨、諦めてこっちにおいで。俺のコロッケ、分けてあげるよ」


< 63 / 377 >

この作品をシェア

pagetop