副社長は束縛ダーリン
悠馬さんはコロッケを箸で持ち上げ、弟の腕にしがみついている私に向けてくる。
三日月形に細められた優しい瞳と素敵に響くバリトンボイスで『こっちにおいで』と誘われて、私は吸い寄せられるように彼の隣に膝をついた。
切れ長二重の瞳は、ダークブラウン。
いつもは涼しげな印象の瞳だが、今は甘く熱く、私を誘惑してくる。
「口を開けて」という声には男の色気が染み出しているようで、私は胸を高鳴らせながら、その指示に従った。
彼の箸から口に入ってきたコロッケは、ほどよい温度。
歯を立てるとサクッと音を立てて切れ、口の中にホクホクのジャガイモの甘みと、パン粉の香ばしさ、ソースの旨味が広がった。
美味しい……。
草太の食べ残しよりも、ずっと美味しく感じる。
まったく同じユキヒラの冷凍コロッケなのに、どうして?
大好きな悠馬さんに、食べさせてもらっているからなの?
私がひと口かじったコロッケを、悠馬さんも口にする。
交互に食べ終えて、顔を見合わせて笑う私たち。
草太はすっかり喧嘩する気をなくしたようで、座って私から奪ったコロッケを黙々と食べていた。