副社長は束縛ダーリン
キタアカリは、別名“栗じゃが”とも呼ばれ、栗のように黄みがかったデンプン質の多い、コロッケ向きの品種。
子供の頃からコロッケが大好きな私は、天職に就けた思いでいる。
コロッケ好きは名前のせいではないと思うけれど、ユキヒラ食品に入社できたのは名前のお陰に間違いない。
『私の名前はキタアカリです。コロッケになりたいくらい、コロッケを愛しています!
ユキヒラ食品に採用していただけましたら、私のコロッケで日本中を、いえ、世界中を幸せにしてみせます!』
採用試験の面接時にコロッケ愛を熱く語った私を気に入って採用の判を押してくれたのは、当時の人事部長、雪平悠馬(ゆきひらゆうま)、三十一歳。
社長の息子である彼は、今年度から副社長に就任していて、三ヶ月前からは私の……。
ふと、遠くはない過去を回想していたら、正面に座っている泉さんの視線が、私の顔から斜め後ろに逸れた。
つられて振り向こうとしたが、その前に左肩に大きな手がポンとのり、整った横顔が、私の右頬にくっつきそうな距離で差し出された。