副社長は束縛ダーリン
「先週、大手有名スーパーに営業に行ったらさ、店長さんの飼い犬自慢に一時間付き合わされて……」
長谷部くんの話に、営業職はそんな苦労があるのかと、同情しつつも楽しく聞いて、「うんうん」と、相槌を打つ。
長谷部くんは話し上手。
顔も中々の男前で、女子社員の人気は高かった。昨年度までは。
今年度に入って急に女子社員からの支持を失った理由は、彼女ができたためだ。
その彼女とは、営業事務の新入社員。
アイドルみたいなかわいらしい容姿をしている女の子で、密かに長谷部くんを狙っていた女子社員たちは『なんだ、結局、顔で女を選ぶタイプの男だったのか』と、彼への評価を下げたみたい。
その話を教えてくれたのはユッコで、『長谷部となら付き合ってもいいかな』と前に言っていたことがあったから、ユッコもガッカリした女子のひとりなんだと思う。
私は長谷部くんのことを恋愛対象に考えたことがないので、彼女ができても変わらず、話し上手の楽しい同期だという印象を持っている。
今も楽しく彼の話を聞いていたら、「長谷部、次なに飲む? ビールでいい?」と、私を挟んでユッコが彼に話しかけた。