副社長は束縛ダーリン

どうしようと心の中に繰り返すだけで、彼との差を埋める解決策は見つからない。


「朱梨、どうしたの? 元気がないね」


ハッと我に返って振り向くと、悠馬さんが心配そうな顔をしていて、私は慌てて笑顔を作る。


「元気ですよ! どんなお料理が出てくるお店かなって、ぼんやり考えてました」


せっかく彼が忙しい時間を割いて、誕生日を祝ってくれるというのに、私はなにを暗くなっているのだろう。

反省して気持ちを切り替え、「お腹鳴っちゃったの聞こえました?」とおどけて見せた。


賑わう繁華街を過ぎ、タクシーは閑静な住宅地の坂道を上っていく。

悠馬さんの予約してくれた店は、見晴らしのよい高台にあった。

タクシーから降りて店の前に立った私は、初めて来た場所になぜか既視感を覚えて、記憶を探る。


「あ、そっか。ここって……」


レンガと白塗りの壁に、赤い洋瓦の屋根の、こじんまりとした一軒家風の店。

出窓には色とりどりの花が飾られ、アーチ型のドアまでのアプローチは、草花と磁器の動物たちでかわいらしく飾られていた。

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