副社長は束縛ダーリン
立ち上がって挨拶しようとしている泉さんを片手で制すと、悠馬さんは私の隣に立つ。
ダークブルーのスーツの腕がテーブル上の資料に伸び、泉さんのレシピを一読した彼は愛想のよい笑みを彼女に向けた。
「幼稚園児のお弁当ですか。まだまだ改善点があるようだけど、泉さんのレシピは信頼できるから期待してますよ」
「副社長、ありがとうございます。
社内会議にまで持っていけるよう努力します」
「頑張って下さい。それと……」
言葉を区切った彼の視線が、私に落とされる。
思わず胸を高鳴らせた私に、彼はクスリと含みのある笑い方をしてから視線を前に戻し、茶化したように言う。
「余力があれば、朱梨のレシピもなんとかしてくれるとありがたいです。
苺とチョコレートのコロッケとか、乳酸菌入りなどと言いださないように、面倒みてやってください」
その言い方に、泉さんはプッ吹き出して、悠馬さんも私の横で楽しそうに笑い声を上げている。
笑われてひとりムッと口を尖らせる私は、心の中で反論中。
ちゃんと真面目に考えたレシピなのに……。