【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
 

『俺も一緒。あの台風の時に、親父の仕事ぶりを間近で見て、この会社を手伝いたいと思った』
『そうでしたか』

私が高校生だった頃だから、その時きっと専務は大学生くらいだ。そう、ぼんやりと思う。

すると、目の前に手が差し出された。
大きな手に、長い指。綺麗な手だなと思っていると、強引に手を取られ、きつく握られた。

少し乾いて大きな手のひらの感触に、目を見開く。

『これからよろしくね、詩乃ちゃん』

固く握手をしながらそう微笑まれ、カッと首筋のあたりが熱くなった。

『……詩乃ちゃん、ではなく冬木です』

かろうじて上擦った声でそう言うと、専務は肩を揺らして笑った。
からかわれているんだと気づいて、慌てて握手した手をほどき、きびすを返す。

『わ、私は秘書室におりますので、なにかありましたらお呼びください』

そう言って、役員室から出る。ぱたんと背後で扉がしまった途端、そこに背中を持たれて大きく息を吐き出した。

立て続けに異動になった、前任の三人の秘書に、心から同情してしまう。
あんな人のそばにいて、惹かれるなっていう方が無理だ。そう思った。


 



 

< 176 / 255 >

この作品をシェア

pagetop