【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
全部大切に覚えておいて、でもなにもなかったフリをして、今まで通り仕事をしよう。
これ以上なにか望むほど、私はワガママでも、うぬぼれてもいない。
専務はハチを成仏させる手伝いをしてくれただけで、愛なんてない。わかってる。
大丈夫、十年前の幼い自分のように、勘違いしたりなんて、もうしない。
そう自分に言い聞かせながら、そっと手を伸ばし、眠る専務の髪に触れた。
こうやって、専務の寝顔を見られるのも、これが最初で最後なんだな。
いつまでも見ていたかったけど、そんなこともしてられない。
専務が起きる前に、気持ちを切り替えなきゃ。
恐る恐る腰に回った腕を持ち上げ、専務を起こさないようにそろりベッドから抜け出す。
昨日、思い切り緊張して力んでいたせいか、膝に力がはいらず崩れ落ちそうになる。
なんとかベッドに手をつきヨロヨロと体を起こすと、バランスを取るように尻尾が床に触れた。
そのすっかり体に馴染んた感覚に、少し時間を置いて驚く。
「え……?」
恐る恐る体を捻り見下ろせば、そこには黒く長い尻尾が揺れていた。
慌てて頭にも手を伸ばす。ふわりと柔らかい、耳の感触。
「消えてない……!?」
そうつぶやいて、私は途方に暮れて床にしゃがみこんだ。