【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
その瞬間、思わずしゃがみ込み膝に顔をうずめる。
「……うーっ」
後悔と恥ずかしさで、玄関でひとり唸ってしまう。
うつむいた瞼がじわりと熱くなる。
「もう、なに今の可愛げのない反応。キスくらいさらっと出来たらいいのに。もっと可愛くいってらっしゃいって言えたらいいのに、私のバカ……」
ハチのお陰で少しは素直になれたとはいえ、この歳までひねくれ続けた可愛げのない私が、突然性格を変えられるはずもない。
自己嫌悪に大きなため息をついていると、ガチャリと目の前の扉が開いた。
どうしたんだろう、と顔を上げると、しゃがみこんだ私を見下ろして意地悪に笑う専務。
「忘れ物してた」
「忘れ物、ですか?」
きょとんと涙目で専務のことを見上げる私に顔を寄せ、唇に触れるだけのキスをした。
「行ってきますのキス」
驚きで目を見開き固まる私に優しく笑いかけ、ぐしゃりと少し乱暴に頭をなでる。
「不器用でひねくれた詩乃ちゃんが、好きだよ」
耳元でそう言って笑うと、「じゃあ行ってきます」と何事もなかったように立ち上がり、真っ赤な顔の私を玄関に置き去りにして出ていく専務。