【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
「川、ですか……? なんで専務がそんなこと」
戸惑いながらそう言うと、専務はにっこりと笑った。
「だから、前に詩乃ちゃんの地元に行ったことがあるって言ったよね? もしかしたら、すれ違ってたかもしれないねって」
「え? え?」
パチパチと瞬きをする私に、専務は呆れたように笑い指をさした。
「そこ、開けて見てみていいよ」
そう言った専務の指の先には、リビングの棚があった。今朝、専務が『大事な物が入っている』と言った引き出し。
「でも……」
戸惑いながら専務の顔を見ていると、「いいから」とうながされ、恐る恐る引き出しを開ける。
そこに入っていたのは、古ぼけたひとつの缶詰だった。
「これ……」
そっと触れ、持ち上げる。
子会社の、綾崎フーズで作っている缶詰。
数年前にパッケージを一新し、子供が好きな人気のキャラクターとコラボした華やかなものに変わったから、このシンプルなデザインはもう相当前のものだ。
そう思いながらくるりと缶を反対にすると、底にへたくそな絵が描いてあった。
動物とも怪物ともつかない奇妙な生き物が、ふたつ。並んでこちらを見上げていた。
見覚えのあるその絵に思わず目を見開くと、専務はにっこりと笑った。